休職していた従業員から「主治医より就労可能との診断書が出ましたので復職させてください」と申し出があった場合、企業はどのように判断すべきでしょうか。
診断書が提出されたからといって、直ちに復職を認めなければならないわけではありません。
主治医は医学的な見地から就労可能かどうかを判断しますが、実際の業務内容や職場環境、配置予定業務まで十分に把握しているとは限りません。そのため、企業は診断書の内容を尊重しつつも、従業員が復職後に担当予定の業務を安全かつ継続して遂行できる状態にあるかを総合的に判断することが重要です。
また、復職の可否を判断する際には、結論だけではなく、どのような手順で判断したかという「プロセス」も重要になります。
1|復職判断で確認すべきポイント
企業は、次のような事項を確認しながら復職の可否を判断するとよいでしょう。
- 復職後の予定業務を継続して遂行できるか
- 所定労働時間どおりの勤務が可能か
- 通勤に支障はないか
- 業務を行ううえで安全面に問題はないか
- 業務上配慮すべき事項や再発のおそれはないか
これらを確認するためには、主治医の診断書だけではなく、本人との面談や、必要に応じて医師へ意見を求めることも有効です。
医師の意見を踏まえながら総合的に判断する
復職判断では、主治医の診断書だけに依拠するのではなく、必要に応じて医師へ復職後の配慮事項や回復状況について意見を求めることが望まれます。
その際には、予定している業務内容や勤務条件などを医師へ適切に伝えることで、より実態に即した意見を得ることができます。また、医師へ意見を求める場合には、必ず本人の同意を得たうえで、本人の協力のもと進めることも重要です。この医療情報の提供にかかる同意も書面などの記録に残る形で取得してください。
なお、当事務所には、実務上、休職者の同意、協力が得られないケースについてのご相談もよく受けます。この場合、復職にかかる立証責任は、原則、休職者にあること、会社としては復職にかかる必要な情報を取得できないことから復職の可否等を判断することができず、結果として復職を認めないとの判断になり、退職扱いとなる可能性があることなどを丁寧に説明のうえ、協力を求める対応が必要になります。
2|復職判断のプロセスを大切にする
復職の可否は、「復職させる」「復職を認めない」という結論だけでなく、その判断に至るまでの過程が重要です。
例えば、
- 本人と面談し、現在の体調や就労に対する考えを確認する
- 主治医へ必要な事項について意見を求める
- 復職後の業務内容や必要な配慮を検討する
- 必要に応じて産業医などの専門家の意見も参考にする
といった手順を踏むことで、企業として合理的かつ適切な復職判断を行いやすくなります。
また、面談内容や医師から得た意見、最終的な判断理由などを記録として残しておくことも、後日のトラブル防止につながります。
📝ポイント
復職判断では、診断書だけで結論を出すのではなく、本人との面談や医師の意見、復職後の業務内容などを総合的に検討し、適切なプロセスを踏んで判断することが重要です。また、その判断過程を記録として残しておくことで、企業のリスク管理にもつながります。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」も実務上よく利用しますので、該当事案ではご利用をおすすめします。
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所にご相談いただいた場合には、ひな形、書式の提供のほか、各種事案の特性を踏まえて、医師への意見照会のお手伝いもしております。
復職判断のご相談は、早めの段階で弁護士へ
復職の可否を誤って判断すると、安全配慮義務違反や解雇無効など、会社に重大な法的リスクをもたらしかねません。
「診断書が出たが復職を認めてよいか判断に迷う」「医師にどこまで確認すればよいかわからない」「判断のプロセスに不安がある」など、判断に迷う場面では、できるだけ早い段階で労務に詳しい弁護士にご相談ください。面談や医師への確認の段階から弁護士が関わることで、後のトラブルを大きく減らすことができます。
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所では、新潟県内の企業様を中心に、復職判断をはじめとする労務トラブルのご相談に数多く対応しております。対応にお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた弁護士
上遠野 鉄也(かどの てつや)
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所 代表弁護士
新潟県弁護士会所属
使用者側の労務問題を数多く手がけ、新潟を中心に中小企業・医療機関の顧問を75社超務める。休職・復職対応や懲戒処分・問題社員対応など、労務問題の予防から解決まで、経営者の「参謀」として実践的な助言を行っている。
