【こんなお悩みはありませんか】
- 課長職の社員がメンタルヘルス疾患で休職し、復職することになったが、以前と同じ役職の職務は任せられそうにない
- 役職を外す場合、賃金(役職手当)も下げることになるが、トラブルにならないか不安
- 復職の判断と降格の判断をどう整理すればよいか分からない
- 実際に降格を実施した後、従業員から効力を争われないか心配
休職からの復職場面は、企業の人事労務担当者が最も判断に迷う局面の一つです。
特に管理職からの復職では「元の役職に戻すべきか」「役職を外して降格すべきか」という判断が、賃金にも直結するため、対応を誤ると重大な労使紛争に発展しかねません。
本コラムでは、このテーマについて実務上の考え方を整理します。
目次
1|「復職の判断」と「人事上の措置(降格)」は分けて考える
まず押さえていただきたい大原則は、復職の可否の判断と、降格という人事上の措置は、同時に扱わないということです。
復職の可否は、以下の2点によって判断します。
- 社員本人との面談
- 主治医等に意見を求めつつ判断する
つまり、「復職させてよいかどうか」は医学的な回復状況を踏まえて判断すべき事柄であり、「役職をどうするか」という人事上の措置とは切り分けて検討する必要があります。
この2つを混同して同時に処理してしまうと、後になって「復職の条件として一方的に降格された」といった形で争われるリスクが高まります。
2|役職を外す(降格)判断における留意点
会社が人事権を行使して役職を外す(降格する)場合、当該役職に対して支給されていた役職手当については賃金規程等に従って支給されなくなります。もっとも、この人事権の行使が権利の濫用とならないよう、以下の観点からの検討が必要です。
- 業務上・組織上の必要性の有無・程度
- 労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するか否か
- 労働者がそれにより被る不利益の性質・程度
- 労働者のキャリア・名誉等への配慮
さらに実務上検討すべき内容として、次の点も重要です。
- これまでの職歴・業績・昇進などの経緯を考慮し、他の代替業務を検討する
- 業務変更にあたっては、従業員の経歴・業務内容を踏まえて疾患による病状の程度に配慮する
- 賃金についても大幅な減額とならないよう配慮する
これらの検討にあたっても、医師に病状の程度や配慮すべき業務内容について意見を確認した上で判断するというプロセスが望ましいとされています。
一方で、降格という人事権の行使自体は、医師の意見に必ずしも左右されずに、会社の経営判断として行うべきものである点には注意が必要です。
つまり、「復職できるかどうか」は医師の意見を重視すべき領域、「役職をどうするか」は会社の経営判断の領域、という整理になります。
3|トラブルを防ぐための実務対応
(1) 症状が改善していない場合の説明・書面化
症状が改善していない状態で役職を外す場合には、役職を外れた後の処遇について明確に説明し、書面化しておくことがトラブル防止につながります。口頭だけの説明では、後日「聞いていない」「そんな条件は知らなかった」といった水掛け論になりかねません。
(2) 降格のタイミングは復職後の業務遂行能力を確認してから
復職後に降格を行う場合は、復職後の実際の業務遂行能力を確認してから判断するほうが安全です。復職後の降格の効力が法的に争われた場合、当該従業員の休職前の業務遂行能力と復職後の業務遂行能力との違いを、客観的に明らかにできる資料をもって会社側が主張・立証する必要があります。感覚的な評価ではなく、業務日報や面談記録などの客観的な資料を日頃から整備しておくことが重要です。
(3) 復職と同時期に降格する場合は本人合意を得る
なお、復職と同じタイミングで降格も行うのであれば、当該従業員との間で降格について合意を得るようにすることが安全です。一方的な通告ではなく、丁寧な説明とすり合わせのプロセスを経ることで、後日の紛争リスクを大きく下げることができます。
まとめ
メンタルヘルス不調からの復職と役職の取扱いは、次の3点を切り分けて整理することがポイントです。
- 1復職の可否は「本人面談」+「主治医等の意見」で判断する
- 2降格(役職を外す)判断は、会社の経営判断として、権利濫用とならないよう慎重に検討する
- 3説明の書面化・タイミングの見極め・本人合意の取得により、紛争リスクを最小化する
役職者の復職・降格という場面は、賃金への影響も大きく、従業員側の心理的な反発も生じやすいテーマです。就業規則の休職・復職規定の整備状況や、個別の事情によって適切な進め方は異なりますので、対応方針の決定前に労働問題に精通した弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
復職・降格の場面こそ、専門家への早期相談が重要です
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所(代表弁護士:上遠野鉄也)は、中小企業・医療機関向けの企業法務、紛争予防に関するコンサルティング、人事労務に関するコンサルティングを強みとし、社会保険労務士向けの勉強会や研修講師も務めるなど、実務に即した助言を行っています。
「復職させてよいか分からない」「役職を外したいが進め方に自信がない」といった段階でのご相談も歓迎しております。トラブルが顕在化する前の対応こそが、会社を守る一番の近道です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた弁護士
上遠野 鉄也(かどの てつや)
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所 代表弁護士
新潟県弁護士会所属
使用者側の労務問題を数多く手がけ、新潟を中心に中小企業・医療機関の顧問を75社超務める。メンタルヘルス対応・休職復職・懲戒処分・問題社員対応など、労務問題の予防から解決まで、経営者の「参謀」として実践的な助言を行っている。
