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うつ病の社員が転勤・配転を拒否したら? 受診命令の出し方と拒否された場合の対応を新潟の弁護士が解説

【こんなお悩みはありませんか】

  • 「うつ病で治療中なので単身赴任はできません」と社員から配転・異動を拒否された
  • メンタルヘルス不調が疑われる社員に受診を勧めたいが、どこまで会社が命じてよいのか分からない
  • 受診命令を出しても従業員が応じてくれず、対応に困っている
  • 過去に無理に異動をさせて重大な事態になった裁判例があると聞き、不安になっている

人事労務の現場では、精神疾患を抱える社員への対応を一歩間違えると、会社が安全配慮義務違反を問われ、損害賠償請求や労働審判・訴訟に発展するリスクがあります。

本コラムでは、新潟県内で使用者側の労務問題を数多く手がける弁護士が、配転拒否と受診命令という2つの場面について、法的根拠と実務上の注意点を解説します。

1|精神疾患を理由とした配転拒否への対応

(1) なぜ「配転を強行してはいけない」のか

会社には労働契約法5条に基づき、労働者の生命・身体等の安全を確保しながら労働させる「安全配慮義務」があります。メンタルヘルスの不調を申し出ている社員に対して、その事情に配慮せず配転・転勤を強行することは、この安全配慮義務を尽くしていないと評価される可能性があります。

実際に、うつ病にり患した労働者に配転を命じ、拒否されたため説得の上で配転を実施したところ、当該労働者が自殺に至った事案(名古屋地裁平成19年1月24日判決・労働判例939号61頁)や、自殺未遂後に本人の希望もあり職場復帰させたところ、約10日後に退職し自殺に及んだ事案(千葉地裁平成27年7月8日判決・労働判例1127号84頁)など、会社の対応の在り方が裁判で厳しく問われた例が存在します。

(2) 会社が取るべき3つのステップ

配転を検討する際は、以下のプロセスを踏むことが重要です。

  • 1
    本人の意見を聞き、協議する異動に対する不安や疑問を丁寧にヒアリングします。
  • 2
    本人の現状を診断書等で把握する感覚的な判断ではなく、客観的な資料に基づいて症状の程度を確認します。
  • 3
    配転の可否・業務内容について主治医に意見を求める最終的な配転の可否や条件は、会社が一方的に判断するのではなく、医師の意見を踏まえて医学的な意見をベースに判断するプロセスを経ることが重要です。

ここで重要なのは、「医師の言うとおりにする」ことではなく、「医師に意見を求めつつ、会社として判断する」というプロセスそのものです。

このプロセスを欠いたまま配転を強行すると、たとえ結果的に配転自体に業務上の必要性があったとしても、プロセスにおいて安全配慮義務を尽くした対応とはいえず、会社の責任が問われるリスクが高まります。

2|受診命令に応じない社員への対応

(1) 会社は受診を命じることができるのか

メンタルヘルスの不調が疑われる従業員に対し、精神科医等への受診を命じることは、従業員のプライバシーに配慮した上であれば可能です。会社には従業員の安全に配慮する義務がある以上、その前提となる病状把握のための受診命令にも一定の合理性が認められます。

就業規則上に受診命令の根拠規定がなくても命令自体は可能と解されていますが、後々のトラブルを避けるためには、規定を明記しておく方が安全です。

(2) 受診先の指定・要請方法の注意点

受診先の医師の指定は、会社が合理性のある医師を指定するのであれば可能と考えられていますが、従業員側にも医師選択の自由(労働安全衛生法66条5項但書)があります。

会社が提出された診断書等に疑問を持ち、他の医療機関への受診を命じるケースも見られますが、多くの場合は主治医から詳しく話を聞くことで足りることも多く、他医療機関への受診命令の発令は慎重に検討すべきです。

要請の方法は、初期段階ではいきなり書面で命じるのではなく、口頭で行い理解を得るのが望ましいとされています。ただし、会社として受診の必要性が高いと判断できるケースでは、書面で勧告・説得し、受診の機会を提供した証拠を残すことも意識してください。

(3) それでも受診に応じない場合

受診命令を拒否する従業員については、会社として精神疾患であるとの判断がつかない以上、精神疾患を抱えていない従業員として通常どおり扱えば足りる、というのが基本的な考え方です。

その上で、勤怠不良・遅刻・早退・周囲への悪影響行為などの問題行為があれば、まずは注意書を交付し、それでも改善が見られない場合には懲戒・解雇等の人事措置を検討することになります。ただし、この場合も「受診の機会を提供したにもかかわらず応じなかった」という経緯を書面で残しておくことが、後の紛争予防の観点から極めて重要です。

まとめ

配転拒否・受診命令のいずれの場面でも、共通して重要なのは「医師の意見を求めつつ判断する」というプロセスを省略しないことです。このプロセスを欠いた対応は、結果として重大な事態を招いた場合に、会社の安全配慮義務違反として厳しく問われるリスクがあります。

  • 配転は、本人との協議・診断書の確認・主治医への意見聴取を経てから判断する
  • 受診命令は、根拠規定の整備と丁寧な要請プロセスを心がける
  • 拒否された場合の対応も、書面での記録化を徹底する

これらの実務対応は、就業規則の整備状況や個別の事案の経緯によって最適な進め方が異なります。

対応を誤ると、後日の労働審判・訴訟において会社に不利な認定がなされるおそれもあるため、判断に迷う段階で専門家に相談されることを強くおすすめします。

新潟県で使用者側の労務問題を数多く取り扱う弁護士にご相談ください

弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所(代表弁護士:上遠野鉄也)は、新潟県内で数少ない「使用者側の労働問題」を中心に扱う法律事務所として、企業・医療機関を中心に数多くの顧問契約を結び、メンタルヘルス対応を含む人事労務トラブルの予防法務に力を入れています。

配転拒否や受診命令への対応でお困りの際は、問題がこじれる前の早い段階でのご相談が、円満かつ適法な解決への近道です。まずはお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた弁護士

上遠野 鉄也 弁護士

上遠野 鉄也(かどの てつや)

弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所 代表弁護士
新潟県弁護士会所属

使用者側の労務問題を数多く手がけ、新潟を中心に中小企業・医療機関の顧問を80社超務める。メンタルヘルス対応・休職復職・懲戒処分・問題社員対応など、労務問題の予防から解決まで、経営者の「参謀」として実践的な助言を行っている。

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