📋 解決事例のポイント
相応に高い待遇で採用した管理職について、職務内容や賃金などの労働条件の変更をめぐり、従業員との間で紛争が生じた事例です。
管理職の処遇変更では、採用時の労働契約の内容、職務変更の必要性、賃金減額の根拠、従業員の同意の有無など、複数の法的問題を検討する必要があります。
当事務所では、会社側代理人として、労働契約や就業規則、関係資料を確認し、会社側の法的な立場を整理したうえで、相手方代理人との交渉に対応しました。その結果、職務変更や賃金減額をめぐる労務紛争を法的手続に至らずに早期解決することができました。
※守秘義務および関係者のプライバシーに配慮し、具体的な事実経過や解決条件等は記載していません。
① ご相談の概要
ある企業では、特定の職務を担うことを期待し、管理職として従業員を相応に高い待遇で採用していました。しかし、その後、従業員の職務内容や処遇を見直す必要が生じ、会社は職務変更と賃金の見直しを行いました。
これに対し、従業員との間で労働条件の変更の有効性などをめぐって見解が対立し、労務紛争に発展しました。会社としては、採用時の労働条件やその後の経緯を踏まえ、法的な立場を整理するとともに、適切な解決方法を検討する必要がありました。
そこで、当事務所が会社側代理人として対応することとなりました。
② 弁護士の対応と解決結果
1.採用時の労働契約と職務変更に関する法的検討
まず、採用時の労働契約や就業規則、関係資料を確認し、会社と従業員との間でどのような労働条件が合意されていたのかを整理しました。特に、管理職や専門職を採用する場合には、特定の職種・業務内容に限定する合意が成立しているかどうかが重要になります。
そこで、採用時の契約内容や関係資料を踏まえ、職務変更の有効性について法的な検討を行いました。事案発覚の当日、当事務所にご連絡をいただき、その後一貫してサポートを行いました。
2.賃金減額を含む労働条件変更の有効性を検討
次に、職務変更に伴う賃金の見直しについて検討しました。管理職として相応に高い待遇で採用されていた場合、職務内容の変更に伴い、従前の賃金水準を見直す必要が生じることがあります。
しかし、職務変更が認められるとしても、当然に賃金減額まで認められるわけではありません。そのため、職務変更と賃金減額をそれぞれ独立した法的問題として検討し、会社側の法的な立場を整理しました。
3.会社側代理人として交渉に対応し、紛争を解決
以上の法的検討を踏まえ、当事務所が会社側代理人として相手方代理人との交渉に対応しました。労働条件の変更に関する紛争では、会社側の法的主張を整理するとともに、紛争が長期化した場合の経営上の負担や法的リスクについても検討する必要があります。
本件についても、これらの事情を踏まえて対応した結果、最終的に紛争を法的手続に至る前に早期解決することができました。
③ 担当弁護士のワンポイント解説
1.高待遇で採用した管理職の職務変更には注意が必要
企業が管理職や専門職を中途採用する場合、特定の知識、経験、能力などを期待し、一般の従業員よりも高い待遇で採用することがあります。しかし、採用後に職務内容の変更が必要になったとしても、会社が自由に職務や賃金を変更できるわけではありません。
特に重要なのが、採用時に職種や業務内容を限定する合意が成立していたかどうかという点です。
最高裁判所令和6年4月26日判決は、職種・業務内容を限定する合意が存在する場合、使用者は労働者の個別的同意なく、その合意に反する配置転換を命じる権限を有しない旨の判断を示しています。
したがって、会社としては、採用時の労働条件通知書や雇用契約書だけでなく、採用時の説明や交渉経緯なども踏まえ、職種限定合意の有無を慎重に判断する必要があります。
2.職務変更が有効でも、賃金減額が当然に認められるわけではない
管理職を別の職務に変更する場合、従来の賃金水準を維持することが適切でないと考えられる場合もあります。しかし、職務変更の有効性と賃金減額の有効性は、別の問題です。労働契約法第8条では、労働条件の変更は労使双方の合意によることが原則とされています。
また、就業規則等に基づく労働条件の変更についても、法令上の要件を満たす必要があります。そのため、会社が職務変更を行う際には、賃金の変更についても契約上の根拠や本人の同意の有無などを確認することが重要です。
特に、大幅な賃金減額を伴う場合には、変更の理由や内容を丁寧に説明し、その経緯を記録するとともに、必要に応じて書面による合意を得ることが望ましいと考えます。
3.労務紛争では、法律上の見通しと経営上の合理性の双方が重要
従業員との間で労働条件の変更をめぐる紛争が生じた場合、会社としては、自己の主張が法的に認められるかどうかを検討する必要があります。もっとも、会社側の主張に相応の理由がある場合であっても、紛争が長期化すれば、経営者や人事担当者に時間的・精神的な負担が生じます。
また、労働審判や訴訟に発展した場合には、費用負担や結果の不確実性についても考慮する必要があります。
そのため、紛争解決にあたっては、法律上の主張を適切に行うことに加え、企業経営への影響も踏まえて、どのような解決が会社にとって合理的なのかを判断することが重要です。
当事務所では、企業側の労務問題について、法律上の見通しと経営上の実情の双方を踏まえた対応を重視しています。
④ 管理職の職務変更・賃金減額についてよくあるご質問
管理職として採用した従業員を、別の職務に変更することはできますか?
採用時の労働契約の内容や職種限定合意の有無などによって判断が異なります。
職種限定合意が存在する場合には、原則として、本人の個別的同意なく異なる職種への配置転換を命じることはできません。職種限定合意がない場合でも、配置転換命令権の根拠や権利濫用の有無などを検討する必要があります。
管理職を降格させる場合、給与も減額できますか?
降格したからといって、必ずしも給与を減額できるわけではありません。
降格の根拠や有効性に加え、賃金規程、労働契約の内容、本人の同意の有無などを確認する必要があります。
従業員が賃金減額に同意しない場合、会社はどう対応すべきですか?
一方的な減額を進めるのではなく、契約上の根拠と労働条件変更の必要性を整理することが重要です。
従業員への説明や協議を行うとともに、就業規則や賃金規程、労働契約の内容を確認し、法的に許容される対応方法を検討する必要があります。
⑤ 経営者・人事担当者の方へ
管理職や専門職の処遇変更は、一般の従業員の配置転換とは異なる問題が生じることがあります。
特に、相応に高い待遇で採用した従業員について、職務変更や賃金減額を検討する際には、次の点を確認することが重要です。
- 採用時に職種・業務内容を限定する合意が成立していないか
- 職務変更について、労働契約上の根拠や業務上の必要性があるか
- 賃金減額について、契約上の根拠や本人の同意があるか
- 労働条件の変更に関する説明・協議の経緯が記録されているか
- 紛争が生じた場合に備えて、関係資料が適切に保存されているか
管理職の処遇変更をめぐるトラブルを防ぐためには、問題が表面化する前から、労働契約の内容や対応方針を整理しておくことが大切です。
⑥ 新潟で管理職の降格・賃金減額・労務トラブルにお悩みの企業様へ
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所では、新潟県内の企業を中心に、会社側の人事労務問題についてご相談をお受けしています。管理職の降格・職務変更、賃金減額、問題社員対応、退職トラブル、未払賃金請求など、企業が直面する労務問題について、紛争予防から交渉・労働審判・訴訟対応まで取り扱っています。
当事務所では、単に法的な可否を判断するだけではなく、企業の組織運営や経営上の負担にも配慮し、経営者・人事担当者が適切な判断を行えるよう支援しています。管理職の処遇変更や労働条件の見直しについてお悩みの場合には、早い段階でご相談ください。

上遠野 鉄也(かどの てつや)
弁護士法人リーガル・パートナー法律事務所 代表弁護士
新潟県弁護士会所属
企業側の人事労務問題を中心に、労働契約、問題社員対応、降格・賃金減額、退職紛争などに対応しています。
