協調性のない社員
目次
協調性のない社員とは?特徴とよくある言動
会社組織は、複数の人が役割を分担しながら仕事を進めることで成り立っています。そのため、「協調性」=周囲と適切にコミュニケーションを取り、互いに調整しながら業務を進める力は欠かせません。
ところが現実には、「どうしてもチームで動けない」「自分のやり方を変えようとしない」いわゆる協調性のない社員に悩まされている企業は少なくありません。
たとえば、次のような言動が見られます。
- 会議で他人の意見をすぐに否定し、建設的な議論につながらない
- チームで決めた手順やルールを守らず、自分の判断で独自のやり方をしてしまう
- 上司や同僚から注意・指導を受けても素直に聞かず、反論ばかりして改善しない
- 業務に関する情報を共有せず、結果として同じミスやクレームが繰り返される
- 挨拶や最低限のコミュニケーションすら避け、周囲との関係づくりを拒む
こうした社員は、単に「性格があわない」「少し頑固」というレベルを超え、業務への支障や組織の雰囲気の悪化を招くことも多くあります。
もちろん、企業には社員一人ひとりの個性を尊重する姿勢も求められます。しかし、協調性の欠如が原因で、他の社員が疲弊していたり、業務の品質や生産性が下がっていたりする場合には、企業として適切な対応をとる責任も生じてきます。
協調性のない社員が生まれる原因・協調性のない社員を放置するリスク
1 協調性のない社員が生まれる主な原因
協調性のない社員といっても、「本人に100%の原因がある」とは限りません。実際には、本人の要因と会社側の要因が重なっていることも多く見られます。
代表的な原因としては、次のようなものが考えられます。
- 性格・価値観のミスマッチ
強いこだわりや完璧主義があり、「自分のやり方が一番正しい」と思い込んでいるケースです。本人としては「品質を守りたい」など善意のつもりでも、周囲を否定する態度となり、協調性がないように映ってしまいます。 - 前職やこれまでの経験とのギャップ
前の職場が個人主義で、「成果さえ出していれば良い」という文化だった場合、チームワークを重視する会社に入ると、本人が「なぜここまで周囲に合わせなければいけないのか」と感じやすくなります。 - 人事配置や評価制度の問題
向いていない部署に配属されていたり、がんばっても正当に評価されていないと感じると、「どうせわかってもらえない」と投げやりになり、周りとの関わりを断ってしまうケースもあります。 - 社内のコミュニケーション不足
指示がいつも曖昧で、人によって言うことが違うと、社員の側も「どうせ合わせても無駄だ」と感じてしまい、結果として自己流に走ることがあります。
原因の切り分けを行わずに、「あの人は協調性がない」で終わらせてしまうと、適切な対処が難しくなってしまいます。
2 協調性のない社員を放置するリスク
では、そのような協調性のない社員を放置すると、企業にはどのようなリスクが生じるのでしょうか。実際に、私たちが労務相談を受ける場面でも、**「早期に対応していれば防げたトラブル」**が少なくありません。
(1)職場の雰囲気が悪化する
協調性がない行動を取る社員がいると、まわりの社員のストレスが蓄積し、人間関係の悪化につながります。
- 「もう一緒に仕事をしたくない」
- 「なぜ会社はあの人を注意してくれないのか」
といった不満が広がり、配置転換を希望する社員が出たり、組織全体の士気が下がってしまうこともあります。
(2)業務効率の低下・ミスの増加
報連相(報告・連絡・相談)を怠ったり、勝手にルールを変える行動は、作業ミスやダブルチェック漏れの原因になります。最終的には、取引先からのクレームや信用低下につながるケースも少なくありません。
(3)優秀な社員の離職
協調性のない社員を放置すると、「会社は何もしてくれない」という不信感が高まり、真面目に働いている社員ほど先に疲れてしまいます。
結果として、
- 「これ以上ここで働くのは難しい」
- 「自分ばかり我慢させられている」
と感じた優秀な人材が退職してしまう危険があります。
(4)労務トラブルに発展するおそれ
問題行動が続いているにもかかわらず、注意内容を記録に残さないまま、感情的にきつく叱責してしまうと、いざ人事処分を検討した際に、
- 「不当な扱いだ」
- 「パワハラを受けた」
などと主張され、トラブルに発展することがあります。
このように、協調性のない社員を放置することは、企業にとって生産性の低下・人材流出・法的リスクという大きなダメージにつながりかねません。
協調性のない社員への対応ステップ(注意指導〜解雇まで)
それでは、実際に企業は協調性のない社員へどのようなステップで対応していくべきでしょうか。重要なのは、感情的にならず、段階を踏んで、客観的な記録を残しながら対応することです。
① 行動の事実確認と原因把握
最初に行うべきは、「何が問題なのか」を具体的な事実に落とし込むことです。
- いつ
- どの場面で
- どのような発言・行動があったのか
- それによって、どのような不都合や支障が生じたのか
を整理します。
同時に、その背景に業務指示の曖昧さや部署とのミスマッチがないかも確認します。行動の原因が性格だけなのか、職場環境にも課題があるのかで、取るべき対応が変わってくるからです。
② 注意指導(口頭 → 書面化)
次に、本人への注意指導を行います。ここでは、次の点が重要です。
- 抽象的な叱責ではなく、「〇月〇日の会議で、同僚の意見を遮り、『そんな案は意味がない』と言い切った」など、具体的な事実を指摘する
- 「今後はこうしてほしい」という期待行動をセットで伝える
- 面談の内容や本人の反応を、できるだけメモや書面に残す
最初は口頭での注意でも構いませんが、改善が見られない場合には、注意文書や指導書というかたちで書面化することが望ましいです。これは後々、「適切な指導を行ってきた」という証拠にもなります。
③ 業務改善指導・配置転換の検討
注意指導を行ってもなお改善が見られない場合には、より踏み込んだ対応も検討します。
- 業務改善指導書を作成し、改善すべき点・期限・フォロー方法を明示する
- チームや上司との相性を考慮し、配置転換を検討する
本人の適性を見極めつつ、会社としても改善に向けた支援を行ったことがわかるよう、プロセスを丁寧に積み上げていくことが大切です。
④ 懲戒処分・契約更新の判断(最終段階)
それでもなお、就業規則に反する行為が続き、業務や職場環境に深刻な悪影響が出ている場合には、懲戒処分を検討せざるを得ないこともあります。
懲戒処分とは、就業規則に基づいて会社が社員に科すペナルティであり、具体的には、
- けん責(注意・始末書)
- 減給
- 出勤停止
- 譴責・戒告
- 最終的には懲戒解雇
などの種類があります(内容は各社の就業規則により異なります)。
また、有期雇用の場合には、**契約更新を行わないこと(雇い止め)**を検討する場面もあります。
ただし、こうした処分は社員の生活に大きな影響を与えるため、法的なハードルが非常に高いことに注意が必要です。処分に踏み切る前に、弁護士に相談しておくことを強くおすすめします。
協調性がないことだけで解雇できる?裁判例と注意点
弁護士に依頼するメリット・当事務所のサポート
1 協調性の欠如だけで解雇はできるのか
「協調性がない社員に本当に困っている。解雇できないのか。」
このようなご相談は、企業からしばしば寄せられます。
結論から言うと、「協調性がない」という一点だけで、直ちに解雇が有効になるケースは多くありません。
日本の裁判所は、解雇が有効かどうかを判断する際に、
- 解雇に客観的な合理的理由があるか
- 解雇が社会通念上相当といえるか
という、いわゆる「解雇権濫用法理(かいこけんらんようほうり)」に基づいて判断します。
単に「上司と性格が合わない」「態度が悪い」といった理由だけでは、解雇が無効とされる可能性が高いと考えられます。
一方で、協調性の欠如がエスカレートし、
- 同僚への暴言や無視が続き、職場の人間関係を著しく悪化させた
- 指示やルールに従わず、重大なミスや顧客クレームを繰り返した
- 再三の注意・指導・配置転換を行っても改善が見られなかった
といった事情が積み重なった結果、解雇が有効と判断された裁判例も存在します。
つまり、「協調性がない」という抽象的な評価ではなく、どのような具体的行動がどれだけ続き、会社がどのような是正努力をしたかが重視されるということです。
2 裁判例から見える注意点
裁判例を概観すると、企業側にとっての注意点は次のように整理できます。
- 問題行動をその都度メモに残すなど、具体的な記録を蓄積すること
- 口頭注意だけでなく、書面での注意や指導書の交付も行うこと
- 配置転換や業務内容の見直しなど、会社としてできる手立てを尽くしていること
- それでもなお改善が見られず、他の社員や業務に重大な支障をきたしていること
これらのプロセスを踏まずに感情的な判断で解雇してしまうと、後に争いになったとき、解雇が無効と判断され、多額の賃金支払や慰謝料を命じられるリスクもあります。
3 弁護士に依頼するメリット・当事務所のサポート
協調性のない社員への対応は、現場のストレスが高く、感情も揺れやすい領域です。そのため、弁護士が入ることで、次のようなメリットがあります。
- 企業側の立場から、法的リスクを踏まえた客観的な対応方針を整理できる
- 注意指導書・業務改善指導書・始末書などの書面の内容やタイミングについて、具体的なアドバイスを受けられる
- パワハラなどの反論を受けにくいように、言い方や手順を工夫できる
- 懲戒処分や解雇、退職勧奨に進む場合にも、必要な証拠や手続きを整えたうえで実行できる
リーガル・パートナー法律事務所では、企業側の立場から、問題社員対応・労務トラブルの予防に多数携わってきました。新潟市・新潟県内を中心に、全国からのご相談にも対応しています。
- 「協調性のない社員への注意書面をチェックしてほしい」
- 「このまま雇い続けるべきか、解雇を検討すべきか悩んでいる」
- 「社内の人間関係が限界にきており、どこから手をつけるべきか分からない」
こうしたお悩みをお持ちの企業さまは、問題がこじれる前に、どうぞお気軽にご相談ください。状況を丁寧にお伺いしたうえで、御社にとって最も現実的でリスクの少ない対応策を一緒に検討いたします。
