非違行為を行う社員
目次
非違行為を行う社員とは?
「非違行為(ひいこうい)」とは、会社のルールや法律に反する行為全般を指す言葉です。とくに、就業規則や服務規律に違反する行為、社会的にみて許されない行為が典型です。
具体例としては、
- 会社のお金や備品の横領・私的流用
- タイムカードの不正打刻、架空残業の申請
- 業務上の重大なミスの隠ぺい、虚偽報告
- セクハラ・パワハラなどのハラスメント
が挙げられます。
また、勤務時間外の私生活での行為であっても、会社名を出して過激なSNS投稿を行う、飲酒運転で逮捕されニュースになるの場合には、会社の社会的評価を損なうため「非違行為」と評価され、懲戒処分の対象になり得ます。
法律上も、労働契約法や裁判例は、従業員の行為が企業秩序を害する場合には、会社が懲戒処分(注意・減給・出勤停止・懲戒解雇など)を行うことを認めています。ただし、就業規則に懲戒の根拠が定められていること、処分が「社会通念上相当」といえることが必要であり、行き過ぎた処分は無効とされるおそれがあります。
非違行為を行う社員を放置するリスク
「多少問題はあるが、業績に直結していないので様子を見ている」という企業も少なくありません。しかし、非違行為を行う社員をそのままにしておくことには、次のようなリスクがあります。
まず、職場のモラル低下です。真面目に働く社員からすると、「不正をしても怒られない」「ハラスメントをしても許される」と感じてしまい、不公平感や不信感が募ります。その結果、離職の増加や、生産性の低下につながりかねません。
次に、企業の信用失墜のリスクです。ハラスメントや情報漏えい、不適切なSNS投稿などは、一度外部に知られると、取引先や顧客、求職者からの評価が大きく下がります。現代では、従業員の不祥事がSNSで瞬時に拡散し、会社名とともに批判されるケースも珍しくありません。
さらに、法的責任のリスクも見逃せません。ハラスメントを放置した結果、被害者がうつ病を発症し労災認定を受けた場合には、会社に対し、安全配慮義務違反や使用者責任に基づく損害賠償請求がなされる可能性があります。また、横領や情報漏えいについては、取引先から直接、損害賠償や契約解消を求められる場合もあります。
加えて、「今までは黙認してきた行為なのに、突然重い懲戒処分を行った」ケースでは、公平性・平等性を欠くとして、処分が無効と判断されることもあります。 見て見ぬふりを続けることは、将来のより大きなトラブルの“地雷”を増やしている状態だといえます。
非違行為を行う社員への対応
では、実際に非違行為が疑われる社員がいる場合、会社はどのような手順で対応すべきでしょうか。感情的な叱責や、いきなりの解雇は禁物です。おおまかには、次のステップを踏むことが望ましいと考えられます。
1 事実関係の確認・証拠の整理
まず、「何が、いつ、どこで起きたのか」をできるだけ正確に把握します。関係者へのヒアリング、メールやチャットのログ、監視カメラ映像、タイムカードなど、客観的な資料を集めて整理しましょう。ここを曖昧なまま処分を進めてしまうと、後から社員側に否定され、処分の有効性が揺らぐおそれがあります。
2 本人への聞き取りと「弁明の機会」
次に、当該社員本人から事情を聴取します。このとき、「なぜそうしたのか」「背景にどのような事情があったのか」を丁寧に確認し、本人にも説明・反論の機会(弁明の機会)を与えることが重要です。裁判例でも、弁明の機会を与えない懲戒処分が無効とされた例があり、手続の公正さが重視されています。
3 就業規則との照らし合わせと処分内容の検討
事実関係が整理できたら、自社の就業規則に定められた懲戒事由・懲戒の種類と照らし合わせ、どの処分が妥当かを検討します。行為の悪質性、被害の大きさ、過去の指導歴を総合的にみて、「社会通念上相当」といえる範囲にとどめる必要があります。
軽微なミスであれば注意や指導にとどめ、横領や重大なハラスメント、安全規程違反などでは減給・出勤停止・諭旨解雇・懲戒解雇といった重い処分も検討対象になります。ただし、懲戒解雇はもっとも重い処分であり、無効と判断されると会社側のダメージも大きいため、慎重な判断が求められます。
4 再発防止と職場環境の見直し
処分をして終わりではなく、「なぜ非違行為が起こったのか」を振り返り、再発防止策を講じることも大切です。ハラスメント研修の実施、情報管理ルールの見直し、経理・支払フローのチェック体制の強化が考えられます。
非違行為は、個人の問題に見えて、実は組織のルール不足やコミュニケーションの不全が背景にあることも多いため、「人の問題」と切り捨てず、組織全体の課題として向き合う視点が重要です。
弁護士に依頼するメリット
ここで企業法務に詳しい弁護士に相談・依頼することには、次のようなメリットがあります。
1 適法でブレのない判断ができる
弁護士は、労働契約法・労働基準法等の法令を踏まえ、「このケースではどの程度の処分が許されるか」「解雇まで踏み込めるか」といった“ライン”を具体的にアドバイスできます。これにより、「処分が重すぎる」として無効と判断されるリスクを減らしつつ、必要なけじめもつけやすくなります。
2 就業規則・ハラスメント規程の見直しを一緒に進められる
懲戒処分の有効性を確保するには、「就業規則にどこまで具体的に非違行為や懲戒の種類を書くか」がカギになります。 弁護士に相談いただければ、最新の裁判例や実務の傾向を踏まえた就業規則・服務規律・ハラスメント規程の整備をサポートでき、将来のトラブル予防にもつながります。
非違行為を行う社員の問題は、放置しても自然に解決することはありません。早い段階で事実を整理し、就業規則と法律に沿った対応をとることが重要です。
「この行為は非違行為といえるのか」「どの程度の処分が適切か分からない」「就業規則が今のままで通用するのか不安だ」と感じられたときが、専門家に相談すべきタイミングです。
当事務所では、企業法務・労務トラブルに注力し、企業規模や業種、これまでの運用状況に合わせたサポートをご提供しています。非違行為を行う社員への対応や、就業規則の見直し、顧問弁護士のご依頼をご検討の企業さまは、どうぞお気軽にお問い合わせください。
